靴を履く

自分と自分をとりまく事物との距離を確認すること

月が見えるか?

   夕方、珍しく父親が電話をくれた。
「月が見える?ちょっと見てみて。満月やけ。」
月がきれいだよって電話をかけてきてくれる父親。
こんな素敵な夜はほかにある?あんな素敵な夜空を初めて見た。懐かしい?そう。
澄んだ深い紺色の空、うっすらとグラデーションになって遠くに見える一点の月。
二時と五時の位置に見える星、冷たい風。なんていったら良いのか、言葉で言い表せない。お父さんありがとう、言葉不足でごめんね。私はうれしくてたまらない。胸が痛くてたまらないよ。

ジョンと日暮れの散歩をしながらシタンコラを歩いてると、血の気がさぁっと引いていくのがわかる。血の気が引くというか、熱が下がって地面に流れていってしまうような感覚。シタンコラは、何もないから雲を見るでしょ。音がしないから遠くのバイクの音と鳥の声を聞こうとするでしょ。誰もいないからジョンに話かけるでしょ。 全身で身震いしてる、 同じね。 それをずっと感じれないって知ってるのはみんな同じ。 だからなにか、しみてしまうんだよね。 なにかさ、 そうって私の中からいなくなるでしょ。風が吹いて消えようとするでしょ、私じゃなくて。ね。だれから、さ、思い出すんだよね。
  学校の帰り道はだれもいないから、一人で 誰かに話しかけてた。それは私のどうにかできることじゃなかったんだよ、本当は誰かと帰りたかったんだけどさ、みんな帰り道が反対だから仕方なかったんだよ。何がつらかったって、一人で毎日一時間歩くことほど嫌なことはなかたよ。でもだから帰り道のどんなちいさなものもよく覚えてる。子供ってそういうものね、みんな。私は一年ごとに一つずつ年をとって、でもそれから10年たっても一人で家に帰ったよ。あなたはどんな気持ちで絵を描くのかって、夕暮れの後の空お風が冷たい時に泣きそうになるからだよ。 好きだった。一人で歩いたり自転車に乗ったり歌ったりすること。夕方暗くなると尚更私には好都合でね、暗いから、みんな私の顔がわからないでしょ、だから一人でいても悲しくなくなる。誰もいないと思うと一人が好きになるよ。誰かいると、恥かしいからさ。
一人でいると。かなしくなるしね。いいことね。

昨日の夕方の空、白鳥の羽みたいだって言ったでしょ。 また、悲しそうな顔しないでよ。

02.13*00:03*Comment[0]*Trackback[0]
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